017/屍術師ニバス◆sBilkqa6rc


 ここでの選択肢は二つ。この島からの脱出か、参加者を殺して最後の一人となるか。
 前者はどうだろうか。ユーゼスは説明が終わった後に、あの広間に集めた百人を転移させた。それほどの人数を同時に転移させる魔法を使えるということだ。
 そして名簿を確認したが、死んだはずの者の名前があった。つまりは、ユーゼスは死者の蘇生も可能ということだ。
 それほどの力を持っているのならば、説明の中での言葉の『外界から完全に隔絶された空間』というのは嘘ではない可能性が高い。
 となると残るは後者のみ。だが……仕方がなくやるというわけではない。


 ――――優勝者には、その者が望むことを何でも叶えてやろうと思っている。


 そう、勝ち残った者にはどんな願いも叶えるとユーゼスは言った。
 その程度のことは、造作もなく出来るのだろう。

 ならば、乗ってやろう。そしてこの『ゲーム』で優勝し、願いを叶えてもらおうではないか。


 民家の二階、配置してあった木製の椅子に座り、卓上に支給品の入った袋の中身を初老の男は確認していた。
 開いた窓から差し込む陽光は眩しいほどで、男は目を細めている。
 そして中身をほぼ出し終わり、男は袋の底にあったものを発見した。
 それは一枚のカードだった。ユーゼスが説明した通りだと、そこに写しだされているものがランダムに支給されたアイテムなのらしい。
「ククク…………」
 その映し出された物を見て、初老の男――ニバス・オブデロードはニヤリと嗤った。
 そしてカードを手に取った刹那、光を放った。陽光とカードの光を受け、ニバスは思わず目を閉じる。
 しばし経ってから、目を開けるとそこには長い筒のようなものが宙に浮いていた。これがどのようなものか、ニバスは知っていた。
 南方の大陸、バルバウダ大陸で製造・開発された――
「銃……」
 マッチロック式、即ち火縄銃と呼ばれる一発を撃った後の装填に時間が掛かる型だが、威力は盾を貫くほどだ。
 人体に当たれば、ただでは済まないだろう。
 浮いている銃を手に取り、外に出て試射をしてみようかと思い立ち上がり――

「畜生ッ!!」

 叫び声が開いた窓から聞こえてきた。


 何故だ! 何故こんなことになったんだ! 何故フリックが殺されなければならないんだ!
「フリック……」
 解放軍の頃からの良き仲間であり、良き友であり、良き相棒だった。
 そのフリックが死んだ。あの男に、ユーゼスに……。
 あいつだけは許さない! 殺してやる!
 だが、ユーゼスを殺したとしても……。
「畜生ッ!!」
 叫びながら民家の壁を殴った。拳から血が滲み出ているが、痛みを悔しさが掻き消す。
 たとえユーゼスを殺したとしても、フリックは生き返らない。
「うう……」
 嗚咽が虚しくあたりに響く。


「闇を住処とし狂気を食らう夢魔どもよ…………」


 その言葉にビクトールは後ろを振り向く。
 そこにはいつの間にか、長い筒のようなものを持った初老の男がいた。


「死の眠りへと誘え…………!」


「く……魔法か!」
 だが、既に遅かった。


「ナイトメア!」


 そしてビクトールの視界が暗転した。


「さぁ、ゲームの始まりだ」
 その声を合図に、大広間に明かりが灯される。
 そして、横たわっていた人々が目を覚まし始めた。

「これは………」
 目の前の出来事にビクトールは混乱する。

「ここは外界から完全に隔絶された空間にある孤島だ。
 お前たちは様々な世界から選ばれ、この島に集められたというわけだ」

「…………!!」
 そして気付いた。

「さて、お前たちにはこれよりこの島で……殺し合いをしてもらう」

「やめろ……」
 この続きは、分かりきっている。

「それは……どういうことだ?」
 ユーゼスはその男へと顔を向け、答える。
「聞こえなかったか? 殺し合いをしてもらう、と言ったのだが」

「やめろ……!」
 言葉に反して、『悪夢』は続く。

 その言葉に男は、黙ってユーゼスへと歩み寄る。
 そして腰の剣に手をやろうとして……剣がないことに気づいた。
「お前たちの装備は全て預からせてもらった。無駄な抵抗は止めておけ」

「やめてくれ……」
 『悪夢』は終わらない。

 しかしその男は、黙って右手を掲げる。男の右手が光り、紋章が浮かび上がる。
 そして、ユーゼスに向けて雷が発せられた。
 ……はずだったが、その雷はユーゼスの目前で消えてしまう。

「やめろぉぉぉ!!!!」

 次の瞬間、男の首が破――――


『悪夢』は唐突に終わりを告げた。
 代わりにビクトールの腹部に激しい痛みが襲う。
「ぐぁ……ぅぅ……」
 痛む箇所を押さえると、ぬるりとした液体の感触がした。
 ビクトールは痛みに耐えながら目前の男を睨む。
 ニバスは嗤いながら目前の男を見下ろす。
 先に話したのはニバスだった。
「いやぁ、こんなに早く獲物が来るとは思っていませんでしたよ」
「て……めぇ……」
 ビクトールの声は掠れ、苦痛に顔を歪ませている。
「フフ、あなたは私の戦力となっていただきますよ」
「……俺が……お前……に味方……すると思って……」
 その言葉を聞いて、ニバスは再び嗤う。
「ええ、思っていますよ」
「…………」
 その頃にはもはやビクトールの意識は消えかかり、ニバスの声はほとんど届いていなかった。
 そしてすぐにビクトールの意識は途絶えた。
 ニバスは死んだ男に向かって話しかけた。
「ただし、肉体は改造させていただきますがね。ククク」


【ニバス・オブデロード(タクティクスオウガ)】G-5 住宅街/一日目・8:30

状態:健康
装備:カマンダスガン 残り弾数19
道具:支給品一式
思考:ビクトールの死体の改造

備考
これよりニバスはビクトールの死体の改造(ゾンビ化)を行います。
ゾンビ化については【ゾンビ生成】の欄を参照。

【ビクトール(幻想水滸伝) 死亡】
【残り 97人】

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