018/運命は彼に休息を与えない◆KHyAVTKyzc


「あ〜あ、なんでこんなとこにいるんだろ、俺」
 森の中を闊歩する青年は一人うな垂れた。
 服は全身黒を基調としてまとめられており、やや茶色ががった髪に宝石のような赤い瞳を持つ青年、
 彼の名はウルムナフ・ボルテ・ヒュウガ、世界を救うことを特技とする男である。

 彼は歩きながら自らの記憶を辿る。
 最後の記憶として残っているのは――自らの胸が貫かれるところだった。
(ヤドリギの呪い……あっ、そういや!)
 彼は自らの精神の世界『グレイブヤード』に行くことにした。
 彼を蝕んだヤドリギの呪い、それがどうなっているかを確かめるために。


「……どういうことだよこれ……」
 そこに大樹は無かった。
 中に入った彼を待ち受けていたのは、十字架に貼り付けられた怪物。
 その姿は天使のような姿でもあり、悪魔のような姿でもあった。
 そしてこの怪物の姿は何よりも――ウルに似ていた。
「こいつが封じられてるっていうのかよ……」
 驚くのも無理はない。この怪物『天凱皇』は地球そのものの精であり、
 力を抑えこんだ状態でも、上海を焼き野原にできるほどの力を持つ。
 彼は切り札を封じられてしまったのだ。
 ヤドリギの呪いが消えていたにしてもその落胆は大きい。
「畜生〜、どうすんだよこれからよ〜」
 やめたと言わんばかりに仰向けになる。
 宿題が解けなくて投げ出すような仕草だった。
仰向けになっている彼に声が掛かる。
『諦めるには早いよ、ウル』
「うおっ!!」
 上から覗き込んだ顔にまた驚くウル。
 彼を上から見下ろしていたのは――
「ジャンヌ!」
『ビックリした?』
 ジャンヌという少女はもともとはウルの訪れた村に住んでいた少女で、
 ある事件によって命を落としたが、その魂はウルの心の中で彼の『幸せ』を探していたのだ。
 だがそれは最後の最後に見つかり、答えを聞いたジャンヌは消えたはずなのだが……。 
「なんでいんの?」
『今度はね、ウルの源を探さなきゃ。
 それが見つかれば、この子の鎖も消えるはずだから』
 世界を滅ぼす怪物をこの子呼ばわりとは恐ろしいものである。
「源って……」
 それは前と違い、簡単すぎる問いだった。
 彼の行動の源は……。
『あ、もう答えは知ってるよ。

――だから、早く見つけなきゃ』
「?」
 首を傾げるウル。
「どういうことよ? もうあいつは――」
 そこにジャンヌから、今回最大の衝撃の言葉が浴びせられる。

『アリスはいるよ。この島のどこかに』

 その言葉は彼の心に深く、とても深く響いた。
 信じられないといった顔でいるとさらにジャンヌから声が掛かる。
『知ってるよ、アリスがウルの源だってこと。
 ほら、早く探さなきゃ』
「アリスが、アリスが本当にこの島にいんのかよ!?」
 やっと我に戻るウル、慌てた調子で確認を取る。
 それに対しジャンヌは落ち着いた調子でウルに告げる。
『そうだよ、アリスはいるよ。だから――また闘って、ウル。』
 そう言い残すとジャンヌは消えていった。
 そして視界が暗くなり気づいた時には――元の世界に戻っていた。
「アリス……アリス……」
 はやる気持ちを抑えることもせず、乱暴な手つきで名簿をめくっていく。
 何ページか捲ったところで手が止まる。
 そこには確かに――アリスという名前があった。
 食い入るようにそれを見、そして彼は天に向かい誓いを立てる。
「今度こそ――守りきってみせる!」
 彼は戦いに出る。
 たとえ死を選んでも、その宿命からは逃れられない。


【ウルムナフ・ボルテ・ヒュウガ(シャドウハーツ)】G-6:森の中 /一日目・8:25

状態:健康
装備:?
道具:支給品一式
思考:アリスを探す
備考:フュージョン「天凱皇」は使えません。

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