006/decision◆sBilkqa6rc


「馬鹿な……」 
 深い森の中で、ザエボスは呟いた。 
「オレは、死んだはずだ……」 
 ブリガンテス城で、デニムに討ち取られたはずだ。これは間違いない。 
 デニムに斬り伏せられたあの痛みはつい先程のことのように鮮明に思い出せる。 
 そして意識を失い、気付いたときにはあの広場にいた。 
 広場での男の言葉を思い出す。 
「殺し合いだと……」 
 ユーゼスと名乗った男は、もし勝ち残ったのならば、どんな願いも叶えると言った。 
 死者を蘇らせることが出来るほどだ。それぐらいのことは出来るのだろう。 
 オレは、どうすればよいのだろうか? 
 男の思惑通りに、例え無抵抗の者であっても殺して生き残るのか? 
 否、騎士の名誉と誇りに掛けて、それはできない。
 では、どうするのか?
 決まっている……。



「これがオレの支給品というわけか」 
 自らの支給品を手に持ち、ザエボスは苦笑する。 
 支給品は酒の入った瓶だった。おそらく、『ハズレ』なのだろう。 
「ふざけた真似をしてくれるものだ」 
 酒瓶を袋にしまい、思考を巡らす。 
 この島を脱出するためには、まずは首輪を何とかしなければならない。しかし、自分にはその知識ない。 
 あるのは、剣を振るう業だけだ。その業も、剣がなければどうしようもない。 
 己の無力を思い知り、ザエボスは嘆息する。 
 ともかく、いつまでもここに留まる必要はないだろう。そう思い、歩き始め―――― 


 殺気。 
 背筋を凍らされるような殺気を感じる。 
 いままで、これほどの殺意を受けたことはなかった。 
 そして背後から、こちらへと何者かが疾走する音。 


 すぐさま振り向く。大剣を構えた黒髪の男が――――嗤っていた。 
「…………っ」 
 全身を支配する恐怖に耐え、ザエボスは即座にしゃがむ。 
 男の大剣が髪を掠めた。その体勢のまま、男の腹を殴ろうとする。 
「……ぐっ!」 
 胸に激痛。同時に体が吹き飛んだ。いくらか地面を転がり、ようやく止まった。 
 蹴りを喰らって痛む胸を押さえながら、起き上がろうとするが、力が入らない。 
 男がこちらへと歩み始める。 
(情けない……。何も出来ず、死すとは) 
 そばまで来た男は、ニヤリと嗤って大剣を振り上げる。 
 もはや死は免れないと悟り、ザエボスは目を閉じる。


 乾いた破裂音が鳴り響いた。 
 そして、地面を蹴って飛び退く音。 
 目を開くと、男は遠ざかっていた。 
「な……んだ?」 
 再び破裂音。それに反応し、男は横に飛び跳ね、大木に身を隠す。 
「こちらです!」 
 男性の声がした。声の方向からして、黒髪の男からではないだろう。 
 視界に金髪の男が現れた。金髪の男は地面に転がっていた袋を拾い上げ、こちらへと駆け寄る。 
「走れますか?」 
 痛みは薄れてきた。ある程度は走れるだろう。男の質問に頷き、立ち上がる。 
 黒髪の男が大木からこちらへ走り寄ろうとしたが、金髪の男が手に持っている奇妙な物を男に向けた。 
 破裂音が鳴り響いた。どうやら金髪の男の手にある物から発せられているらしい。 
 黒髪の男は諦めたようで、それ以上追ってこようとしなかった。 
 いくらか走り、森を抜けようとしたところで胸がまた痛み出した。 
 それに気付いたのか、男は一旦走るのを止め、心配そうに尋ねてきた。 
「大丈夫ですか?」 
「ああ……、それほどの痛みではない」 
「そうですか」 
 よく考えれば、これが最初のまともな会話だったことと、まだ名前も名乗っていないことに気が付き、ザエボスは男に名乗った。 
「オレはザエボス。ザエボス・ローゼンバッハだ」 
 それに対して、男は一礼してキザったらしく名乗った。 
「私はナッシュ。ナッシュ・ラトキエと申します」 


【ザエボス・ローゼンバッハ(タクティクスオウガ)】B-3 森/一日目・08:30 
状態:胸を強打 擦り傷多数 
装備:ウォッカ(一瓶) 
道具:支給品一式 
思考:ナッシュと協力? ゲームの脱出 

【ナッシュ・ラトキエ(幻想水滸伝)】B-3 森/一日目・08:30 
状態:健康 
装備:リムファイアー(残り27発) 
道具:支給品一式 
思考:ザエボスと協力? 

【カイム(ドラッグオンドラグーン)】B-3 森/一日目・08:30
状態:獲物を取り逃がしたことに苛立ち
装備:バルムンク
道具:支給品一式
思考:皆殺し

備考 
B-3の森の西端周辺に発砲音が鳴り響きました

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