005/平野にて◆5gfvybM7DI


「しかし弓かよ・・・・・・喜んでいいのか?」
幸い、弓には多少の心得があった。
こんな状況下での扱いなれた武器は心強い味方だったが――その用途を考えると少し気が滅入った。
(ま、ヘコんでても仕方ネェよな・・・・・・)
とりあえず矢筒を背中に当て、紐を袈裟懸けにしてくくる。
弓を持ち、弦の張りを確かめる。
試しにニ、三、射てみようか――そう思って背中の矢筒に手を伸ばしたとき、
背後の草むらから草をかきわける音が聞こえた。

「だ、誰だよ!」
振り向きざまに矢を弓につがえ、弦を引き絞って叫ぶ。
すると草むらからくぐもった声が聞こえてきた。
「ちょっと待つにゃ。今出るにゃ」
同時に草をかく音が大きくなる。
声の主はすぐそこまで来ているようだった。
「待て、動くなって!」
ヒロユキは声の方向に向かって叫ぶ。
ここまで早く他人と遭遇するとは予想していなかったのだ。
心の準備もしていないうちに来られても困る。
「く、来るなよ!」
しかし、声の主はヒロユキの制止を聞いてはくれなかった。

「おこ〜んにちわ〜、だにゃ」

間抜けな挨拶と同時に、草むらからでっぷりと太った猫のような生き物が出てきた。
「うわあ、モンスターか!?」
声の主の予想外の姿に、ヒロユキは思わずのけぞってしまう。
すると目の前のデブ猫は、こころなしか不満そうな表情を見せて言った。
「アンタ、失礼なヤツにゃ」
確かに初対面の相手には最悪の反応だ。
あらためて見ると服も着てるし言葉も喋っている。話には聞いたことのある亜人の一種族だろうか。

「あ、ああ。悪かった。謝るよ」
ヒロユキは姿勢を正し、動揺しながらも一応の謝罪をする。
内心、相手が怒って襲ってきやしないかと心配していたが、
どうやら謝罪に効果はあったようだ。
デブ猫はニカッ、っと笑ってこう言った。

「素直に謝るのはいいことにゃ。
 オイラ、ニキータ。旅の行商人にゃ」

「オイラ、殺し合いなんてまっぴらゴメンにゃ。アンタもそう思うにゃ?」

歩きながら自己紹介を済ませた後のデブ猫・・・・・・ニキータの第一声がこれだった。
「もちろん、俺だってごめんだぜ」
ヒロユキがそう返すと、ニキータをただでさえ細い目をさらに細めた。
「気が合うにゃ。オイラ、一人で困ってたとこにゃ。
 協力するにゃ。あの仮面捕まえて見世物にするにゃ。きっと大繁盛にゃ」
「見世物って・・・・・・」
確かに身を守るにしても一人は心許ない。仲間ができることはありがたかった。
しかし、あのユーゼスとかいう仮面の男を捕らえて、あまつさえ見世物にするなどということが
横を歩くデブ猫にできるとは、ヒロユキには到底思えなかった。

(そもそもあんなのを見世物にして、誰が見るってんだ)
心の中でツッコむ。あくまで心の中だが。

「なあに、遠慮する必要はないにゃ。
 うまくいったらアンタにも、大儲けさせてやるにゃ。」
ニキータはヒロユキの言葉をどう受け取ったのか、自信満々に言う。
ヒロユキにしてみればその自信こそが信用ならなかったが。
「はぁ」
曖昧な返事を打ちつつ、顔を俯く。
開始早々、仲間が増えたと喜ぶべきなのか。
それとも、ろくでもないヤツに絡まれたと嘆くべきなのか。
「どうかしたにゃ?」
ヒロユキの様子が変なことに気付いたのか、ニキータが足を止める。
つられてヒロユキも足を止めると、ニキータは両手を広げて言った。
「悲しい顔はよくないにゃ。仲間が増えて嬉しい時はスマイルにゃ」
無理言うなよ。そう思いつつヒロユキは面を上げて悲しい顔の原因を見た。

「スマ〜〜〜〜〜イル」
デブ猫がニカッ、っと笑っていた。


「はは、は・・・・・・」
ヒロユキのスマイルは引きつけを起こしていた。

【ヒロユキ(アンリミテッド・サガ)】D-4 平原/一日目・08:25
状態:精神的にやや疲労。
装備:ポロンの弓(聖剣伝説) 矢筒(残り24本)
道具:道具一式
思考:俺って不幸。ニキータについていく。

【ニキータ(聖剣レジェンド・オブ・マナ)】D-4 平原/一日目・08:25
状態:万全。
装備:なし。
道具:道具一式+支給品(不明)
思考:あの仮面(ユーゼス)捕まえて見世物にするにゃ。大儲けにゃ。

*ニキータの装備・思考などはヒロユキ側から判断できる内容です。

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