003/小悪魔と星辰剣様◆sBilkqa6rc
「さぁて……、どうしようかなぁ……」 道端で、黒いキャミソールとショートパンツという露出度の高い服装、赤い髪でツインテールの少女――――エトナが呟いた。 エトナは自らの首に触れる。金属のひやりとした感覚が手に伝わった。 「殺し合い、ねぇ……」 あの広場でユーゼスと名乗った男の言葉だ。そして最後に、この殺し合いに勝ち残ったなら、どんな願いも叶えると言った。 「……殿下は確実にこの『ゲーム』に乗るだろうなぁ。あたしはどうするかな」 広場にいるとき、周りの者を見てみたが、ラハールの他にも、かなりの手練がいる様子だった。いかに魔界の住民である自分でも、勝ち残るのは難しいだろう。 この島から脱出をするのはどうかと思ったが、なにせ百もの人数を一人で呼び寄せるほどの力の持ち主だ。 ユーゼスの言葉通りの可能性が高い。だとしたら脱出は不可能だろう。 ふと、地面に転がっている袋に目をやる。中には食料や武器などが入っているらしい。 このまま突っ立っているわけにもいかないので、袋を開けて手で探ってみる。 袋の下の方に一枚のカードを発見し、取り出す。カードには大振り剣の絵が描かれていた。 「これ、どうやって取り――――」 言い掛けた刹那、カードはエトナの手から離れ、光を放った。 すると何もなかったはずの場所に一振りの剣が現れ、白紙となったカードはひらひらと地面へと落ちた。 「なるほどね」 エトナは浮いている剣を手に取り、感触を確かめてみる。 槍ほどではないが、剣もある程度は使える。弓矢などよりもずっと良かった。 「どこだここは……?」 ふいに、どこからか男性の声が聞こえてきた。それに反応し、エトナは身構える。 だが周囲を見回しても、どこにも人影は見当たらなかった。 「お主、何か知らんか?」 再び声が聞こえた。警戒をしていたので、すぐに声が発せられた方向が分かった。 音源は、手に持っている剣だった。 「うわっ、喋るなんて珍妙な剣」 「誰が珍妙だ!」 声を荒らげて、剣は叫んだ。 「アハハ、冗談だって。あたしはエトナ。あなたの名前は? 喋れるほどの剣なら名前ぐらいあるんでしょ?」 「……星辰剣だ。最初の質問に答えて欲しいのだが、ここはどこだ?」 星辰剣の質問に、エトナは言い淀む。 「それは、あたしが知りたいことなんだけどね……。 あの男曰く、外界から完全に隔絶された空間にある孤島」 エトナの答えに星辰剣は訝しげな声を出す。 「何だそれは? そもそも、なぜこんなところに私が……?」 「こっちが聞きたいって……。仕掛けた本人はユーゼスって仮面を被った奴のようだけどね。 ここに来る前に、広場で説明を聞いたよ」 さらにエトナは続ける。 「色々な世界の住人から100人をここに集めて、殺し合いをしろだってさ」 「……それは冗談か?」 「だといいんだけどね。実際に、ユーゼスに刃向かおうとした男が殺されたよ。この首輪をでね」 そう言いながら、エトナは自分の首を指す。 できればラハールが死んでくれた方が良かったのだが、一人減っただけでも良しとしよう。 「……どうやら嘘ではなさそうだな。名簿か何かあらぬか?」 「名簿ならあるけど」 「ビクトールという名前はあるか?」 「探してみる」 再びエトナは袋を漁る。ほどなくして、参加者の名前が書き込まれた紙を発見した。 ハ行を探してみると、すぐに名前を発見できた。 「あった。その人、星辰剣様のご主人様?」 その言葉に、星辰剣は全身全霊をもって否定した。 「ビクトールが私の主人のわけがなかろう! あやつは私の小間使いだ!」 星辰剣とビクトールは仲が悪いらしい。 「そのビクトールって人の特徴を教えてくれないかな? その人と協力できればありがたいんだけど」 星辰剣はしばし考えてから答えた。 「ふむ、一言で表すと『熊みたいな男』だな」 「熊みたいな男?」 あの広場で、殺された男に駆け寄った男を思い出した。 「もしかして、ビクトールさんの知り合いにフリックって人はいない?」 「なぜそれを知っている?」 エトナは困ったような顔をして、口籠る。 「どうしたのだ?」 星辰剣に急かされ、エトナは頭を掻きながら、言いにくそうに答えた。 「あー、さっきの刃向かったって人がフリックって名前だったんだよ……」 星辰剣は面食らったように呻いた。結構、衝撃だったらしい。 しばらくして、ようやく言葉を紡いだ。 「それは、本当か?」 エトナは無言で頷いた。 「そうか……。フリックはなかなか話の分かる男だったのだがな……」 どうやら、フリックとは仲が悪くはなかったようだ。先程思ったことを少しだけ後悔する。 しばしの沈黙の後、星辰剣がその沈黙を破った。 「……いつまでもこうしているわけにはいかんな」 「じゃあ、遠くにお城みたいな建物が見えるから、そこにいってみる?」 「そうだな……、そうしよう」 行き先は決定したので、エトナは荷物をまとめる。 一通りの準備を終え、星辰剣を肩に担いで城へと歩き出す。 「じゃあ行こうか、星辰剣様」 「では行こうか、我が相棒よ」 【エトナ(魔界戦記ディスガイア)】F-3 行道/一日目・8:20 状態:健康 装備:星辰剣 道具:支給品一式 思考:ビクトールの捜索
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